技能実習法に対する声明を掲載しました

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技能実習法に対する声明 <2017年1月27日>

2017年1月27日
内閣総理大臣 安 倍 晋 三 殿
法 務 大臣 金 田 勝 年 殿
外 務 大臣 岸 田 文 雄 殿
厚生労働大臣 塩 崎 恭 久 殿
経済産業大臣 世 耕 弘 成 殿
国土交通大臣 石 井 啓 一 殿

〒169-0075 東京都新宿区高田馬場4丁目28番19号
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外国人技能実習生問題弁護士連絡会
共同代表 弁護士 指 宿 昭 一
共同代表 弁護士 小野寺 信 勝
共同代表 弁護士 大 坂 恭 子
事務局長 弁護士 髙 井 信 也

技能実習法に対する声明

1 政府が、2015年3月6日に国会に提出した「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案」(以下「技能実習法案」という)が、2016年11月18日成立した(以下「技能実習法」ないし単に「本法」という。)。
2 当連絡会は、既に技能実習法案提出時の2015年8月28日付意見書で述べた通り、技能実習制度は廃止すべきと考えており、技能実習制度を存続、拡大させることを前提とする技能実習法の成立を評価することはできない。

 技能実習制度では、途上国への技術移転を通じて国際貢献を図るという制度目的と、安価な労働力確保のために用いられているという実態とが全く乖離している。そして、技能実習制度には、送出し機関や監理団体による中間搾取や、実習実施機関が固定されており技能実習生に転職の自由がない等の構造的問題があり、これが対等な労使関係の構築を困難にして技能実習生に対する人権侵害を引き起こしている。
 技能実習法は、安価な労働力の受入れ制度との実態を直視せずに「国際協力の推進」(1条)を目的に掲げており、上記の構造的問題を残存させるものであるから、法案の成立によって、技能実習生に対する人権侵害が止むとは考えられない。

3 もちろん技能実習法には制度の適正化のための規定も盛り込まれている。また、同法案の成立にあたってなされた附帯決議においても、特に参議院の決議においては、制度の適正化のために様々な条件が付されている。

 それでも、本法案の適正化策は、上記構造的問題を解消するほどに十分なものであるとは考えられない。
 例えば、政府(当局)間取決めについては、国会審議において、取決めを受入れの要件とはしないうえ、相手国に法的拘束力も持たせないものであることが明らかになっており、送出し機関による中間搾取の問題を解消することは全く期待できない。
 また、実習実施機関の変更についても、国会審議において、「やむを得ない事情」がある場合に、まずは監理団体が傘下の実習実施機関内での転籍に努め、外国人技能実習機構は新たな実習先を確保するための連絡調整等の支援を実施するとされている。
 しかし、実習実施機関に問題がある場合に、技能実習生の転籍を監理団体に任せるだけでは、実習先を移動する自由がほとんど担保されないことは、我々が数多く経験するところであり、不十分であることは明らかである。外国人技能実習機構の支援も単なる「連絡調整」に留まるのであれば、結局、「やむを得ない事情」があっても、技能実習生は元の実習先での権利侵害を受忍し続けるか、実習実施機関を離れて「不法就労」するかの、酷な選択を迫られる現状に変わりはない。
 さらに、技能実習生の意思に反する強制帰国に対して本法が明文で罰則規定を設けなかったことは、技能実習生の保護に欠けると言わざるを得ない。

4 また、このような不十分な規制のまま、制度の拡大策を同時に推し進めることも、本法の大きな問題点である。技能実習制度下の人権侵害状況に鑑みれば、制度の拡大は、制度の適正化が実現された後にはじめて実施されるべきである。

5 最後に、技能実習法の成立と関わらず、技能実習制度は廃止すべきである。
 非熟練労働者の受入れについては、非熟練労働者受入れを目的とすることを正面から認め、労働者に対する人権侵害を生じさせる構造的問題を克服した、すなわち、少なくとも中間搾取のおそれが無く、転職の自由が保障された新たな労働者受入れ制度を構築すべきである。

 以上

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